心臓
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症例 アポトーシスと病気
長田 重一
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1998 年 30 巻 12 号 p. 777-784

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抄録

個体の発生過程において,数多くの有害な細胞,無用の細胞が産生される.これらは生体から速やかに取り除かれ,生体の恒常性を維持している.この除去過程は,アポトーシスと呼ばれる過程を経て進行する.Fasリガンドは,アポトーシスを誘導するサイトカインであり,その受容体Fasに結合することにより,数時間内に細胞を死滅させる.この際,カスペースと呼ばれるプロテアーゼが活性化され,細胞の形態変化,染色体DNAの切断などアポトーシス特有の反応へと導く.Fasリガンドは活性化されたT-細胞やNK細胞によって発現され,ウイルス感染細胞や癌細胞を除去する役割を荷なっている.この機構があまりにも異常に活性化されると,劇症肝炎に見られるような臓器破壊をもたらす.一方,FasやFasリガンドが機能しなくなった個体では,脾臓やリンパ節が腫大化し,自己免疫疾患の症状を示して早期に死亡する.ここでは,アポトーシスの分子機構と,その生理作用,病理作用に関して紹介する.

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