抄録
弓部大動脈瘤を合併した偽性大動脈縮窄症の1例を経験した.症例は9歳時に動脈管開存症に対して結紮術を受けた既往をもつ42歳の女性で,胸部X線写真上の異常陰影を主訴に精査したところ,弓部大動脈瘤を合併した偽性大動脈縮窄症と診断した.自覚症状は認めなかったが,瘤径が10cm以上で大動脈二尖弁と上行大動脈の拡張も合併していたため,手術は大動脈基部から弓部大動脈まで全置換を行った.術後経過は良好で,現在社会復帰している.偽性大動脈縮窄症そのものは良性疾患であるがまれに大動脈瘤を合併することがあり,その壁の脆弱性から破裂の危険性も指摘されており手術を必要とすることがある.手術方法としては瘤切除・人工血管置換術が基本であるが,部位によって適切な補助手段を選択することが必要である.