1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 109-112
最近,Brugada症候群にみられる心電図上のJ波,およびST上昇の機序として,一過性外向き電流(Ito)を介する活動電位第1相のノッチ形成および活動電位持続時間(APD)の心室壁内(Epicar-dium,Mcell,Endocardium)における不均一性があげられている.さらに最近ではこの症候群の成因として,ナトリウムチャネル遺伝子(SCN5A)のミスセンス変異によりチャネルの機能が変化したり,フレームシフト変異によりチャネルの機能が消失することによるという報告もある.今回我々は当科で経験したJ波を認めた特発性心室細動例のうち,VF発作時の心電図記録が得られた2例で,VF発作時と非発作時の12誘導心電図から,J波高,ST変化について検討した.
2例共にVPC後のRR間隔の延長によりJ波の増高がみられ,その直後からVFが開始していた.1例ではVF発作時にJ波のみられるV3-6誘導でT波の陰転が認められた.1例ではVF発生時にV3-6誘導で新たにJ波の出現がみられた.特発性心室細動例で時に見られる徐脈時のJ波の増高は心室細動の出現と関連しており,Itoが関与する可能性もあると思われた.