心臓
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第10回心臓性急死研究会 徐脈性不整脈により救急搬送された高カリウム血症患者の検討
阿部 芳久門脇 謙松尾 直樹荒川 博佐藤 匡也熊谷 正之
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1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 19-24

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抄録

【目的】徐脈性不整脈として他院から救急搬送された高カリウム(K)血症例の臨床像を検討する.【対象と方法】高K血症による徐脈性不整脈のために救急搬送された6例(男性3例,女性3例,平均67歳)を対象に,搬送時の臨床所見,治療内容と臨床経過について検討した.【結果と考察】搬送連絡は2例が救急隊員から,4例が通院中の内科医から受け,徐脈のみとされたものが2例,完全房室ブロック,Adams-Stokes発作,急性心筋梗塞疑いと低血糖発作がそれぞれ1例であった.心電図では,20から30/分台の徐脈,P波の消失とT波の増高かつ先鋭化を全例に,QRS幅の拡大を5例に認めた.全例に一時的ペーシングを行ったが,開始までに特別な処置を施さなかった例は1例のみで,他は心肺蘇生術,前胸部叩打,直流通電やアトロピン・カテコラミン投与などの救急処置が必要であった.入院時の血清K値は7.0~9.8mEq/Lで,K値の正常化に伴い症状と所見改善した.入院時の血清クレアチニン値は2.1から5.3mg/dlと全例で高値だった.退院時には,1例を除き2.Omg/dl未満と基準値内か軽度増加の範囲に低下したことから,脱水などをきっかけにして悪化した腎機能障害が高K血症の原因と考えられた.【結語】高K血症はその病態把握と治療が遅れた場合には,急死におわる危険性があることから,徐脈牲不整脈患者の搬送時には常にこれを念頭におくべきである.

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