心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
第10回心臓性急死研究会 QT延長症候群症例の遺伝子異常スクリーニングについて
KvLQT 1遺伝子の異常のみられた姉妹例
吉田 秀忠大谷 秀夫堀江 稔辻 啓子河野 裕春名 徹也藍 智彦西本 紀久大林 和彦篠山 重威福並 正剛
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 44-48

詳細
抄録

分子生物学的手法の医学への応用によりQT延長症候群(LQT)の多くにおいて心筋の活動電位に関与するイオンチャネルの遺伝子異常が報告されている.今回,我々は典型的な先天性LQTのみならず,2次性LQTにもイオンチャネル遺伝子異常が関与しているのではないかと考えPCR/SSCP(polymerase chain reaction/single strand comformation polymorphism)法を用いて遺伝子異常のスクリーニング検査を行った.【症例】16歳と9歳の姉妹.心電図異常の精査を希望し来院.KvLQT 1のPCR/SSCPで異常バンドパターンがみられ,塩基配列を決定したところCがTへの一塩基置換がみられた.この変異はアラニンからバリンへのミスセンス変異であった(A 212 V).姉妹とも同一の遺伝子異常がみられ,ともにKvLQT1の点突然変異をもつヘテロ接合体であった.ミスセンス変異によりイオンチャネルの機能異常をきたし心筋の活動電位時間の延長を生じ心電図上QT延長を起こしていると考えられた.【まとめ】典型的な先天性LQTではないと考えられた症例において先天性LQTにみられるKvLQT 1の異常と同一遺伝子異常が判明した.遺伝子異常スクリーニング検査がLQTの診断,治療方針の決定に有用であった.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top