1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 56-62
心臓性突然死の原因の一つである心サルコイドーシス症に対して,ステロイド治療が行われるようになったものの,その使用方法は未だ確立されたとは言いがたく,特に減量・中止は難しい.有効な投与法を検討するために,なお一層多くの症例の検討を継続する必要があると考え,本報告では最近我々が経験した,ステロイド治療を施行した4例の特徴について検討し,ステロイド治療の意義について考察した.症例は年齢の幅が広く,心不全,房室ブロック,心室頻拍各々の有無等,多彩な特徴を有した.ステロイドに対する反応について検討した結果,心不全のない若年女性症例のみ,プレドニゾロン投与によって房室ブロック,心室頻拍が抑制された.これらの不整脈は同薬剤を2.5mgまで減量すると再発し,再び抑制するために60mg連日投与を要した.心不全を有する一症例の心室頻拍はステロイド投与によって抑制されなかった.ステロイドによる不整脈抑制効果は一定しないが,有効な症例が存在することを示した.また4例ともに数年の経過で心不全傾向が進行していることから,心不全抑制効果は少ないと考えられたが,一方で心不全を有する症例でステロイド減量に伴って一過性に心室頻拍が発生したことから,心不全症例でも安易なステロイド減量は危険な可能性があることが示された.