1998 年 30 巻 Supplement4 号 p. 74-78
頻脈性心室性不整脈の既往がないのにもかかわらず,血液透析・濾過中にtorsade de pointes(TdP)を生じ心室細動となり,電気的除細動を要した2症例について検討した.症例1:77歳,男性.急性腎不全,大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症.心房細動予防目的にキニジン300mg/日の投与を行った.内服開始3日目の血液透析中に,TdPを生じ心室細動となった.透析中のKは3.3mEq/lであった.症例2:61歳,女性.慢性腎不全,陳旧性心筋梗塞.著明な心機能低下と低血圧があり,血液濾過終了直前にTdPを生じ心室細動となった.透析前のKは4.5mEq/lで,透析後は3.6mEq/lであった.2症例のTdPの発生機序として,重症の心疾患と貧血による心筋虚血に加えて,症例1では薬剤や低K血症の,症例2では低血圧と体液量の急激な減少による交感神経系の興奮とK値の急激な低下の関与が示唆された.