心臓
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症例 多発性嚢胞症に合併した急性大動脈解離(早期閉塞型)の1例
高木 和明安川 竜也垣花 将史服部 博高水谷 嘉孝脇田 康志水谷 浩也小林 正米津 益人
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1999 年 31 巻 4 号 p. 255-259

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抄録

多発性嚢胞症に合併した解離性大動脈瘤を経験したので報告する.症例は47歳,男性.主訴は背部痛.既往歴は平成2年に腎結石,平成8年に高血圧を指摘された.家族歴で父親が腹部大動脈瘤と陳旧性心筋梗塞のため手術を受け,同時に多発性嚢胞症も指摘されている.
平成9年2月22日,背部から腰部へ移動する痛みを自覚し近医を受診.胸部X線写真で異常を指摘され胸腹部CTを施行したところ,解離性大動脈瘤(IIIb)と多発性嚢胞症を認め精査目的に当院入院となった.入院時,血圧は124/70mmHg.四肢血圧差は認めず,胸部聴診でも血管雑音など異常はなかった.胸腹部CT,MRIではDeBakey IIIbの解離性大動脈瘤と肝臓,両側腎臓に多発性嚢胞を認めた.多発性嚢胞性疾患は,肝臓,腎臓,膵臓などに嚢胞が多発する常染色体優性遺伝性疾患で,合併症として脳動脈瘤,心弁膜症はよく知られている.原因としてMarfan症候群などで考えられている結合組織の代謝異常によって大動脈壁の脆弱化が生じる可能性や,細胞外基質の異常に伴う血管壁の変性・脆弱性によって生じる可能性が示唆されているが,いずれにしても現時点では明らかな原因は不明とされている.本例の解離性大動脈瘤合併例については,我々が検索した範囲では本邦での報告はなく,欧米での報告例を認めるのみでまれな症例と思われ,本例の如き病態を念頭に置き治療にあたることが肝要であると考えられた.

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