抄録
症例は29歳の男性で,これまで心疾患を指摘されたことはなかった.平成5年頃より全身倦怠感,呼吸困難感を自覚するようになり近医を受診し,心不全にて他院に入院となった.入院後拡張型心筋症(DCM)と診断された.その後内服加療を受けるも,平成8年10月頃より再度心不全症状が出現し,同年12月2日当センター入院となった.入院後ミルリノン0.5μg/kg/minとhANP0.05μg/kg/minを48時間持続投与し,その後1週間に2回の間欠的投与を行った.ミルリノン・hANPの間欠投与を持続しつつ,平成9年3月より3カ月間成長ホルモン(GH)4国際単位の隔日投与を追加した.平成9年3月より3カ月間の予定で成長ホルモン(GH)を4国際単位の隔日投与を開始した.自覚症状は次第に改善し,胸部X線上CTR64%から53%に改善.また,心エコー所見では中隔および後壁の壁厚がそれぞれ中隔が6mm,後壁が7mmから11mmに増加し,左室拡張末期径は90mmから83mmに縮小し,更に心エコーでの心拍出量も著明に増加した.血行動態,運動耐容能も著明に改善し,軽快退院に至った.ミルリノン,hANP間欠投与中に成長ホルモンを追加投与したことによる心不全の改善の可能性が推察された.今回我々は貴重な症例を経験したので報告する.