心筋梗塞1カ月での左室remodelingを断層心エコー図を用いて評価するとともに,ドプラ血行動態指標および神経体液性因子であるANPとBNPとの関係について検討した.対象は合併症を認めない急性心筋梗塞40例,平均年齢59±11歳であった.梗塞後1週間目と1カ月目に断層心エコー図の心尖部四腔像と二腔像からmodified biplane Simpson法を用いて収縮および拡張末期容積と駆出率を計測し,左室流入血流と肺静脈流入血流からドプラ血行動態指標を計測した.1週間目のBNP採血結果から100pg/ml以下(L群)と100pg/ml以上(H群)の2群に分けて検討した.
【結果】L群15例,H群25例であり,拡張および収縮末期容積係数(EDVI,ESVI)は,全てH群がL群より有意に大であり,H群では1週間目から1カ月目の間にEDVI,ESVIとも拡大傾向がみられ,駆出率もH群がL群に比べて有意に低値であった.H群はL群に比べ1週間目,1カ月目ともE波の減速時間(DT)が有意に短く,左房収縮期での肺静脈への逆流血流と左室流入の持続時間の差も有意に大であった.
【考察】最近,BNPが心筋梗塞後remodelingの予測と予後の推定に有用だと報告され,本研究でも梗塞後1週間目のBNP濃度100pg/ml以上であった場合にremodelingが進行する可能性が高いことが示唆され,これらの患者群では左室容積が大きく,駆出率も低値であった.さらに,これらの患者群では左室流入血流と肺静脈流入血流からrestrictivepattemが観察され,拡張障害あるいは拡張期のwall stress増大がこうしたremodeling進行を助長していることも推察された.
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