心臓
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研究 経上腕動脈アプローチによる心臓カテーテル検査における術者被曝線量
●経大腿動脈アプローチとの対比
千田 浩一斎 政博洞口 正之石屋 博樹佐藤 州彦斎藤 春夫佐々木 正寿佐藤 徳太郎
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1999 年 31 巻 8 号 p. 585-592

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抄録

カテーテルなど血管造影器具の材質の発達に伴い,患者に対する侵襲度が低いなどの理由で,心臓カテーテル検査においても経上腕動脈アプローチ(TBA)が普及している.また一方では,術者の被曝線量低減に対する関心が非常に高まっている.
そこで今回我々は,心臓カテーテル検査時の術者被曝線量について,より実際的でかつポイントを絞り分かりやすく評価するため,人体ファントムを用いたシミュレーション実験を行い,経大腿動脈アプローチ(TFA)と比較した.実験は左右の上腕動脈アプローチを想定した種々の撮影プロジェクションで行い, 測定点の高さはu p p e r , m i d d l e , l o w e r の3点とした.そして,シネ撮影および透視に際しての,イメージインテンシファイア(以下I.I.)サイズ10および7インチにおける術者被曝線量について詳しく比較検討を行った.また,その術者被曝の対策についても検討した.結果として,TFAとTBAとの対比においては基本的にはTBAが多く,測定点の高さに関してはlower位置の散乱線量のほうが多い.しかし,プロジェクションによっては異なる結果も得られた.つまり,X線管に近いほど散乱線量が多くなる傾向を示すが,X線管やI.I.が逆に散乱線の遮蔽効果を呈することもあり,複雑であった.複合斜位における散乱線量はかなり多くなる場合があり,またシネ撮影と透視は,線量レベルは異なるが同様の散乱線分布であった.I.I.サイズを7インチに拡大した方が散乱線量は多くなった.臨床においては,鉛防護エプロンを必ず使用するなどの,何らかの術者被曝対策が必要であることが再確認された.

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