β遮断薬は心事故予防に有効であるが,徐脈や房室ブロック,心不全などの副作用を生ずることがあり,高齢の患者には使用しにくいと考えられている.今回我々は,当科で加療した陳旧性心筋梗塞につきメトプロロールを服用した患者の心事故発生率を,年齢別に後ろ向き調査した.対象は陳旧性心筋梗塞1008件,男781件,女227件,発症時年齢60.9±11.4歳で,平均観察期間は16.4±20.1カ月である.
End pointは心事故(致死性および非致死性再梗塞,突然死,心不全死)である.メトプロロール服用群424件では13件(3.1%)に心事故がみられたが,β遮断薬非服用群584件では42件(7.2%)に心事故が発生し,心事故はメトプロロール服用群で有意(p<0.01,odds比0.41,95%信頼限界0.22-0.77)に低値であった.年齢別に心事故発生率をメトプロロール服用,β 遮断薬非服用群で比較すると,60歳以下ではそれぞれ3.1%,6.0%,61~70歳では4.0%,4.5%,71歳以上では1.3%,12.4%(p<0.05,odds比0.14,95%信頼限界0.03-0.75)であり,いずれの年齢層においてもメトプロロール服用群はβ遮断薬非服用群よりも心事故発生率は低かった.両群の患者背景に不一致がみられたが,患者背景別の解析にても同様の結果であった.また,重大な副作用もなく高齢患者でも有効であると考えられた.
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