心臓
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症例 産褥期に心タンポナーデを呈した子癇発作妊婦の1例
原田 敬大江 春人坂井 秀章室屋 隆浩大江 宣春宮本 正史宮原 嘉之河野 茂
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2000 年 32 巻 12 号 p. 961-966

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抄録

妊娠39週の27歳女性,妊娠前より血圧高値を指摘され,31週までは近医産婦人科にて管理され,経過良好であった.しかし,その後通院中断し,子癇発作で入院となる.子宮内胎児死亡,常位胎盤早期剥離の疑いで緊急帝王切開が施行された.入院時より全身浮腫,心拡大,肺うっ血が著明であり,利尿薬を使用されていたが,1週間後も胸部X線の改善が得られないため当科紹介となる.紹介時血圧140/100mmHg,脈拍100/分であり,心胸郭比は68%であった.心エコーで大量の心嚢水を認め,ただちに心嚢ドレナージを施行し,その後は尿量が増加し,全身状態も改善した.血清のウイルス抗体(コクサッキー,エコー)は陰性で,心嚢液は淡黄色透明であり,漏出液であった.正常妊婦でも,妊娠後期になると約20-40%は心エコーで心嚢水貯留を認め,通常は分娩後自然に消失するという.また,高血圧妊婦や,体重コントロール不良例では,その頻度も増加し,時には心タンポナーデを呈することもあり,死亡例も報告されている.本症例も,妊娠後期の生理的心嚢水貯留が,不適切な管理のため増悪し,心タンポナーデを呈してきたものと思われる.診断は困難でなく,発見すれば予後良好であり,周産期の心不全の一因として,循環器医,産婦人科医ともに留意すべき病態と思われたので報告した.

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