心臓
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第33回志摩循環器カンファランス テーマ : 生体時計・既日リズムの基礎と臨床 生物時計の分子生物学
岡村 均
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2000 年 32 巻 12 号 p. 979-986

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抄録

最近,ホルモン分泌,自律神経活動などの約24時間周期の内因性振動も引き起こす,哺乳類時計機構を司る遺伝子群が発見され,急速な勢いでこの分野の仕事が展開している.哺乳類の時計の振り子はPer1,Per2という2種の時計発振遺伝子であり,この転写活性は24時聞間隔で変動する.この転写調節は,mPER1,mPER2,mPER3,mCRY1,mCRY2が巨大な複合体を形成し,BMAL1/CLOCKのEboxを介する転写促進を抑制することによりなされるネガティブ・オートフィードバックループによると想定されている.このループでは,抑制因子の産生から抑制までの「時間のずれ」の長さによって周期が決定される.これには,リン酸化による振動分子や関連タンパクの修飾,核内への移送制御などの戦略が採られる.リン酸化はPERタンパク量を決めるきわめて重要な過程で,核内・細胞質を問わず,casein kinase1εが司ることが判明した.また,核移行に関しては,PERタンパク相互のヘテロダイマー形成により決定される.さらに最近,この中核的なネガティブ・オートフィードバックループを補佐する,遺伝子,タンパク,細胞,組織レベルでの幾重ものフィードバックループが明らかになりつつある.このような強化・安定化された遺伝子転写のリズムは,ついには,行動やホルモンのリズムに至ると考えられる.

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