心臓
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症例 Tug of wire法にてステントを留置した左鎖骨下動脈起始部完全閉塞の1例
加藤 雅也寺川 宏樹黒川 純一野中 裕広石井 孝二金 宣眞政永 敏之平野 巨通河本 邦彦大津 直也中島 浩一郎
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2001 年 33 巻 4 号 p. 315-319

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抄録

鎖骨下動脈病変に対する経皮経管的血管形成術(PTA)では,椎骨脳底動脈系の塞栓症を予防するために椎骨動脈血流を一時的に遮断するprotectiveballoonを用いることが多い.我々は,ガイドカテーテルのバックアップ不良で大腿動脈からではガイドワイヤーが通過しない症例を経験し,tug of wire法にてprotective balloonを併用しつつ安全にPalmazステント留置に成功したので報告する.症例は62歳,男性.主訴は早朝の左手の冷感.大動脈造影で左鎖骨下動脈起始部は完全閉塞しており,大腿動脈アプローチによりPTAを開始した.左鎖骨下動脈起始部が中枢側に偏位し,大動脈弓が左肩上がりのためガイドカテーテルの十分な挿入が困難で,ガイドワイヤーが病変を通過しなかった.上腕動脈アプローチによりガイドワイヤーを進めたところ病変を通過したため,大腿動脈のシースからマイクロスネアを用いてガイドワイヤーを回収した.上腕動脈からprotective balloonを挿入し,大腿動脈からtug of wire法にてPalmazステントを留置した.大腿動脈アプローチではガイドワイヤーが通過しない左鎖骨下動脈起始部完全閉塞に対しては,上腕動脈からwireを通過させtug of wire法を用いることにより,protective balloonを併用した安全なステント留置を行うことが可能である.

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