2001 年 33 巻 4 号 p. 322-329
先天性QT延長症候群の多くは心筋イオンチャネル遺伝子異常に起因し,遺伝的多様性があり複数のカリウムチャネル遺伝子(KvLQT1・HERG・KCNE1・KCNE2)と一つのナトリウムチャネル遺伝子(SCN5A)に変異が同定されている.カリウムチャネル孔はαサブユニットの4量体から構成されるが,常染色体優性遺伝のRomano-Ward症候群では変異型サブユニットが野生型サブユニットと異種4量体を形成しその機能を抑制するため,ドミナントーネガティブ型抑制を呈する.また,HERGチャネルはユニークなキネティックスを有し,これを修飾する変異では臨床像にも影響をもたらす.一方,ナトリウムチャネルは6回膜貫通型ドメインを4個タンデムにつないだα サブユニットの単量体からなるため,ドミナントーネガティブ型抑制は示さず,不活性化を障害し活動電位プラトー相にも持続性電流をもたらすため心筋再分極が障害される.