2001 年 33 巻 9 号 p. 725-730
症例は55歳,男性.動悸と労作後の失神発作があり,近医で肥大型閉塞性心筋症,発作性心房細動と診断された.心エコー図で心室中隔基部厚20mm,左室後壁厚10mmと非対称性肥厚を認め,ドップラー法による左室流出路の収縮期圧較差は153mmHgであった.冠動脈造影検査では冠動脈は正常,第一中隔枝に対して1.5mmのバルーンカテーテルを挿入,加圧し,左室流出路圧較差の減少を認めた.造影剤注入で中隔筋基部の肥厚部心筋に造影剤浸潤と,心エコーで心筋コントラストステインを確認した.同部の無水エタノールを計2.Oml注入,注入直後より左室流出路圧較差は約10mmHgと減少した.6カ月後の心臓カテーテル検査では左室流出路圧較差はValsalva手技でも10mmHg程度であった.本症例は経皮的心室中隔筋焼灼が著効を示した1症例である.本療法は1)中隔筋肥厚部心筋を灌流する中隔枝にカテーテル挿入が可能であり,2)同部の造影剤浸潤と,コントラストエコーでステインを確認でき,3)バルーン拡張閉塞で圧較差が直ちに低下するのを確認できれば,著しい効果が期待できる.