心臓
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研究会 第35回志摩循環器カンファランス テーマ : 薬効から心不全を考える 慢性心不全のβブロッカー療法
松崎 益徳
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2002 年 34 巻 12 号 p. 1010-1014

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抄録

近年,中等症から重症の慢性心不全患者を対象としたβブロッカー療法に関する多くの大規模臨床試験の結果が報告され,その有効性は確立したと言える.しかし,その作用機序の詳細や有効例と無効例の予測など,いまだ不明な点が多く,循環器病学の中で大きな研究テーマとなっている.考えられる機序の一つとして,心拍数,収縮性を低下させることで心筋酵素消費量を軽減し,心筋細胞の修復過程を促進することが考えられている.以前より,βブロッカーの長期投与により心筋細胞内筋小胞体(SR)のCa2+取り込み蛋白であるCa2+ATPase(SERCA)のupregulationや,メタロプロテアーゼ活性の抑制などが示されている.これらの作用は,心筋細胞内のCa2+過負荷の是正や左室再構築(remodeling)の抑制を介して左室機能を改善する.一方,β 受容体への作用機序として,βアドレナリン受容体リン酸化酵素(BARK)の抑制によりβ 受容体のリン酸化を抑え,細胞内シグナル伝達を改善し心機能を改善することも報告されている.今回,SR内Ca2+放出蛋白であるリアノジン受容体機能に注目し,その心不全時における機能不全とβブロッカー療法によるいかなる変化がもたらされるかを最近の自験データを中心に述べ,心不全治療法としてのリアノジン受容体機能安定化の重要性について解説する.

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