心臓
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第14回心臓性急死研究会 各種抗不整脈薬抵抗性の心室頻拍を呈し,経皮的心肺補助を施行したにも関らず死亡した下痢を前駆症状とする急性心筋炎の1例
紺谷 真泉谷 省晶安間 圭一池田 孝之佐々木 素子中沼 安二
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2002 年 34 巻 Supplement3 号 p. 28-33

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抄録

症例は63歳,女性.4日前から下痢・嘔吐,多関節痛,発熱,続いて胸部苦悶が出現し当科受診.血圧測定不能.心電図にてRR間隔740m秒,V1-6でQS patternを呈する心室頻拍(VT)を認めた.心エコー図で左室びまん性壁運動低下, CPK2335IUL,代謝性アシドーシス・多臓器障害を合併.リドカイン100mgは無効,続いて塩酸ニフェカラント8mg静注行うもVT停止せず.経過中左脚ブロックおよび右脚ブロックpatternを示す複数のVTが出現.まもなく呼吸停止となり,心肺蘇生術を行いつつ直流通電を繰り返すがVT停止せず.経皮的心肺補助導入時点で既に心室調律であり入院後18時間で死亡.剖検では肉眼的に心筋の斑状線維化,組織学的に間質のびまん性炎症細胞浸潤(リンパ球優位)・浮腫,巣状の心筋変性を認め,ウイルス感染による劇症型急性心筋炎と診断した.ウイルス性急性心筋炎の原因として最も多いエンテロウイルス属は消化器感染を起こし得るが,急性心筋炎の初発症状として下痢・悪心嘔吐などの消化器症状を有する例は比較的稀とされている.本例はこのような消化器症状を初発症状として発症した劇症型急性心筋炎に致死的不整脈を伴った興味ある一例である.

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