心臓
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症例 脚気心により多臓器不全を発症した1例
市川 壮一郎福澤 茂小澤 俊稲垣 雅行島田 和浩杉岡 充爾池田 篤史沖野 晋一
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2003 年 35 巻 12 号 p. 833-837

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抄録
症例は68歳男性.呼吸困難を主訴として来院.湿性ラ音,代謝性アシドーシス,胸部X線写真上心拡大と肺うっ血を認め, 急性心不全と診断. 血行動態モニター上,心拍出量8.0l/分の高拍出性心不全を認め,多臓器不全を呈していた.ビタミンB1を投与したところ,数時間にて心拍出量は5.0l/分にまで低下し,多臓器不全より脱却した.治療前に採血した血中ビタミンB1値16ng/mlと異常低値を示していたことが後日判明した.本症例は血行動態は脚気心に類似し,ビタミンB1も異常低値を示したが,ビタミンB1欠乏を疑わせる生活歴は認められず,急激な多臓器不全にて発症したことから,脚気心の病態と異なっており治療法に憂慮した症例であった.生活歴等よりビタミンB1欠乏が想定できなくても,その血行動態上脚気心の可能性を否定できない場合は,躊躇することなくビタミンB1投与を試みるべきであると思われた.
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