2004 年 36 巻 5 号 p. 362-369
近年,肺静脈起源の異常興奮が心房細動の発生・維持に重要な役割を果たすことが示され注目を集めている.肺静脈入口部ではmyocardial sleeveと呼ばれる心筋線維が肺静脈の周囲を取り囲んでおり,異常興奮はこの心筋層から発生する.肺静脈myocardial sleeveの心筋細胞では静止電位が不安定で,一部の細胞では自動能(automaticity)による自発興奮を生じることが報告されている.また,肺静脈myocardial sleeveの心筋細胞は細胞内Ca2+過負荷や,それに伴う膜電位の脱分極が生じやすく,撃発活動(triggered activity)が発生しやすい.更に,肺静脈myocardial sleeveの活動電位は持続時間が短く,立ち上がり速度が遅いことに加えて,心筋線維の走行が乱れた錯綜配列を呈するなどリエントリーの基質を有することも示されている.このように肺静脈myocardial sleeveの心筋は様々な機序により不整脈原性を示すが,これらが心房細動の発生,維持にどのように関わっているかについてはいまだ十分解明されていない.