慢性心不全患者におけるACE阻害薬の心房電気的リモデリングに対する効果を,左室駆出率40%未満の安定した慢性心不全患者63例を対象に検討した.患者登録時におけるACE阻害薬投与群(47例)とACE阻害薬非投与群(16例)の患者背景に相違は認められず,3年間のフォローアップ後に,ACE阻害薬非投与群ではフィルター化P波幅の有意な延長が認められ,フィルター化P波幅はACE阻害薬投与群では非投与群に比べ有意に小さくなった.また,ACE阻害薬非投与群では投与群に比べて,心房細動の新規発症率が高くなる傾向が認められた.これらの知見から,ACE阻害薬が心房細動発症の基質となる心房線維化を効果的に抑制し,このことがACE阻害薬投与群における心房細動発症率の低下傾向に関与したと考えられる.