心臓
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第15回体表心臓微小電位研究会 シンポジウムP波加算平均心電図の臨床的意義 洞不全症候群におけるP波同期加算平均心電図の初期低電位の意義
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2006 年 38 巻 Supplement1 号 p. 44-50

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抄録

背景:洞不全症候群(SSS)では,P波同期体表面加算平均心電図(P-SAECG)でfiltered P波の初期成分の異常低電位が特徴的に認められるが,その機序は不明である.洞結節電位直接記録(SNE)を用いた洞房結節機能評価とP-SAECG所見を比較検討し,P-SAECGの初期時相における異常低電位の発生機序およびその臨床的意義を明らかにする.方法:対象は洞房結節機能正常群(C群)13例とSSS群(S群)30例である.P-SAECG記録は, filteredP波の初期30msのroot mean square電位(EP30)およびfiltered P波の初期4μV以下の電位持続時間(ED4)を測定した.洞調律時のSNE記録部心房波の開始から体表面心電図P波の開始までの時間(AS-P)と,P波の開始からHBE心房波までの時間(P-AH)を測定した. 洞房伝導時間は心房ペーシング法を用いた間接的洞房伝導時間(SACTi)とSNEを用いた直接的洞房伝導時間(SACTd)で測定した.成績:1.EP30はC群に比べS群で有意に低値であった. ED4はC群に比べS群で有意に延長していた.AS-PはC群に比べS群で有意に延長した. SACTiとSACTdはC群に比べS群で有意に延長した.2.S群におけるAS-PはEP30と有意に負相関を,AS-PはED4と有意に正相関した.3.C群ではSACTiとSACTdの間に有意差はなかった.S群ではSACTiはSACTdに比べ有意に延長した.4.S群におけるSACTiはEP30と有意に負相関を,SACTiはED4と有意に正相関した.結語:SSSの P-SAECGにおけるP波初期成分の低電位化は,洞房結節内伝導とは無関係に洞房結節周囲の心房筋伝導障害によりもたらされ, P-SAECGはSSSの非観血的診断に有用であると考えられた.

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