2007 年 39 巻 2 号 p. 110-119
近年,世界では多くの自然ならびに人為的大災害が発生している.災害時には,高齢者や心血管リスクが高い患者を中心に,その被害状況に比例して心血管イベントが増加する.その増加はとくに夜間から早朝にかけて著しく,ストレスが解除されない場合,数カ月継続する.この機序として震災時に生じた恐怖やその後の環境変化に伴う極めて強い精神心理ストレスや,睡眠障害による心血管リスク因子の増悪がある.ストレスは交感神経系や視床下部一副腎皮質系を活性化しサイトカインを増加させる.これらの系を介して,血圧昇圧,血液凝固充進,糖代謝障害,炎症反応などがひき起こされ心血管イベントの増加につながる.災害時心血管イベントの予防の観点から,災害発生時の迅速な救急対応に加えて,ストレスの早期軽減を計る行政対応と,震災時の特徴を理解したリスク管理の徹底が重要であろう.