心臓
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HEART's Original [基礎研究] AT1受容体拮抗薬によるSHR頸動脈バルーン傷害モデルの新生内膜抑制にACE2発現増加が関与する
伊賀瀬 道也永井 勅久小原 克彦三木 哲郎フェラリオ カルロス
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2007 年 39 巻 2 号 p. 121-128

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抄録

アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は新たに発見されたアンジオテンシン変換酵素(ACE)の相同体である.ACE2は,特異的にアンジオテンシンII(AngII)をアンジオテンシン1-7(Ang-(1-7))に変換する.このため血管局所でACE2が増加した場合,Ang-(1-7)の血管平滑筋細胞抑制作用を増強させる可能性がある.以前われわれは自然発症高血圧ラット(SHR)の胸部大動脈および総頸動脈におけるACE2の発現を報告した.また胸部大動脈ではアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタンが中膜平滑筋細胞におけるACE2およびAng-(1-7)の発現亢進を介して血管リモデリングの改善に寄与していることを報告した.今回われわれはSHR頸動脈バルーン傷害モデルを用いて,オルメサルタン投与による新生内膜抑制効果とACE2発現調節との関連を検討した.12週齢雄性SHRをコントロ一ル群(n=5)とオルメサルタン治療群(n=5)に分類した.オルメサルタン治療群では血管傷害前日より15日間薬剤の飲水投与(10mg/kg/日)を行った.左総頸動脈をバルーンカテーテルで傷害し14日目に左右総頸動脈を回収して形態学的検討およびACE2蛋白発現を検討した.オルメサルタン治療群では血圧がコントロール群に比して有意に低下したが心拍数は変化しなかった.新生内膜面積は,オルメサルタン治療群でコントロール群に比して有意に抑制された.さらにオルメサルタン治療群ではコントロール群に比して新生内膜におけるACE2の発現が有意に増加していた.以上よりARBによる新生内膜抑制効果にACE2発現増加が関与していることが示唆された.

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