2008 年 40 巻 Supplement1 号 p. 19-23
本研究では,マイクロ波を利用することにより,数センチ程度離れた位置から,且つ着衣の上から完全な非接触で,心拍に伴い体表面に現れる微小な変位を観察することが可能か検証することを目的とした.さらに,得られたデータより心拍数変動指標の計測を試みた.椅子に着座させた健康男子大学生7名を対象に,2分間の安静の後,2分間不快な聴覚刺激を与えることによりストレスを与えた.その間,椅子の背もたれ越しに背部左側の第4肋間狭付近にマイクロ波を送信し,その変化を観察した.これに併せて電極を用いた心電図の計測を同時に行い,マイクロ波レーダーによる非接触計測と電極を用いた計測とを比較することとした.結果として,安静着座時において背部よりR波に同期した体表面変化を捉えることに成功した.また,聴覚刺激を用いて擬似的にストレスを与えた状態において,電極を利用した接触計測,及びマイクロ波レーダーによる非接触計測両方により取得されたデータを,最大エントロピー法を用いて心拍数変動指標を計測し比較すると,LFにおいては両者の間に高い相関(R=0.76)が確認できた.これにより,完全に非接触な状態でメンタルストレスを評価することが可能であることが示唆された.