2008 年 40 巻 Supplement3 号 p. 127-131
症例は67歳,男性.生来健康であったが,2007年7月16日に胸部不快感,全身倦怠感を主訴に近医受診.急性心不全の診断にて当院へ救急搬送となった.来院時の血圧は102/56mmHg,心拍数は104/分,整であり,意識は清明であった.心電図ではQRS幅の延長を認め,胸部X線では心拡大と両肺野のうっ血を認めた.心エコーでは左心室壁運動は全周性に著明に低下しており,まずは心不全の加療を開始したが,カテコラミンへの反応も乏しく,血圧は徐々に低下傾向となり,人工呼吸を開始し,PCPSを挿入した.冠動脈造影では冠動脈に有意狭窄は認めなかった.心電図上のQRS幅は経過とともに急速に延長傾向となり,PCPS挿入後ICUに帰室した時には心室細動であった.電気的除細動を3回行ったが心室細動は停止せず,その後はモニター上心停止状態であった.Pacing,IABPによる機械的循環補助も開始し,γ-グロブリン5g/日の投与も開始した.第3病日にCHDFを開始,第5病日よりステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロンlg/日)を3日間施行.第6病日より徐々に血圧が上昇し始め,第8病日に心拍の再開を確認することができた.第9病日にPCPSから離脱,第16病日には人工呼吸器から離脱した.長期間の心拍停止状態から救命・社会復帰しえた貴重な1例であり,報告する.