2008 年 40 巻 Supplement3 号 p. 156-161
致死性心室性不整脈に対する薬物治療は,抗不整脈薬を使用する以外に心臓交感神経ブロック療怯がある.心臓交感神経をブロックする方法は一般には,βブロッカー静注薬の投与と左星状神経節ブロック(LSGB)の2種類があげられる.今回われわれは,βブロッカー静注薬と塩酸ニフェカラント(NIF)を併用しても除細動不可能であったelectrical stormに対して,LSGBとNIFを併用し除細動に成功した症例を経験したので報告する.症例は22歳,男性,院外心肺停止例.救急隊現場到着時,心室細動(VF)であったため,電気的除細動を施行され洞調律へ回復.当病院到着後,多源性の心室頻拍(VT)の再発を何度となく繰り返し,塩酸リドカインあるいはNIF投与と電気的除細動および心臓マッサージを繰り返したが,難治性であった.心肺蘇生中,経皮的心肺補助装置を併用しながら,高カリウム血症に対して血液透析を施行した.VT/VFはelectricalstormに移行したため,塩酸プロプラノロール,硫酸マグネシウム,経皮的ペーシングなどを併用して除細動を試みるも,除細動効果は一時的でありVFコントロールは困難を極めた.およそ12時間の心肺蘇生術を継続後,最終的にLSGBおよびNIFの併用により除細動に成功し,その後VT/VFの再発を認めることはなかった.