症例は58歳,男性.既往に特記すべきことなし.ソフトボールの試合でピッチャーをしており,キャッチャーからの返球を受けようとした際(ボールは直接患者には当たっていない),突然崩れるようにマウンド上で倒れた.直ちにチームメイトが心肺蘇生(CPR)を開始し,救急隊到着時の自動体外式除細動器(AED)モニター上は心室細動であった.AEDにて意識消失6分後に除細動を1回施行.その後心拍再開し,救急車内で意識レベルはJCSI-1まで改善した.心臓カテーテル・心臓電気生理学的検査(EPS)などを行ったが,原疾患の特定はできず,現時点では拡張型心筋症の初期である可能性が考えられた.後日,他院にて植込み型除細動器(ICD)の植え込み術を行った.本例は院外で心室細動を起こしたにもかかわらず,バイスタンダーと救急隊の適切な処置により,脳への後遺症なく発症前と変わらない状態で社会復帰が可能となった症例である.1次救命処置の重要性を改めて知りうる症例であり報告する.