2008 年 40 巻 Supplement4 号 p. 107-113
背景:植込み型除細動器(ICD)の誤作動の原因として,T波をover senseすることによるT波のdoublecountが知られている.特にBrugada症候群での報告が多い.Brugada症候群の場合はST-T波の変動が特徴とされており,一見,このためにdoublecountしたものと考えられるが,必ずしも臨床症状などと一致せず,疑問が残る.
目的:ICD誤作動の状況を体表面12誘導心電図とICDで記録された心内心電図で比較検討した.
方法:Brugada症候群と診断されICDが植え込まれた10名(全例男性,平均年齢48.9歳)を対象とした.ICDはMedtronic社製(M)6例,Gaidant社製(G)4例であった.ICD外来時にpilsicainide(P)1mg/kgを静注し,12誘導心電図とICDによる心内心電図を同時に測定し,波形の変化を検討した.さらに,3例では電池交換時にショックリードから直接電位を測定し,P投与前後で比較検討した.
結果:P投与後,体表面心電図ではSTの変化が認められたが,心内心電図は,Mでは,必ずしも,その変化の程度が一致しておらず,Gにおいては,変化はほとんど認められなかった.また,ショックリードから直接,心筋電位を記録したところ,P投与でQRS波の極性の変化が認められた.
結語:ICDで記録される心内心電図はフィルターによって処理されているため,体表面心電図とは異なっていた.Brugada症候群ではP投与でQRSの極性も変化する可能性が示唆されたが,その機序は不詳であった.