抄録
16歳の先天性完全房室ブPaックの1例に,His束心電図,心室ベーシソグによるoverdrive suppression testを施行し,人工ベースメーカ植え込みの適応の有無について検討した.
心電図は完全房室ブpaックでQRS時間は0.08秒と上室波形を示し,RRは1.56秒であった.His束心電図はA-Hブロックを示し,心室は房室結節調律により興奮していると考えられた.そこでその下位ペースメーカの自動能の安定性をみるために,右室ペーシング(刺激頻度60,80,100,120回/分の4種類,刺激時間15秒間)によるoverdrive suppression testを施行したが,房室結節部における自動能回復時間はいずれのベーシング頻度においても1.5秒以内であった.これは洞結節における自動能回復時間の正常値範囲内にあり,本例での房室結節部の自動能は安定したものであると考え,人工ペースメーカの植え込みなしで約1年間follow up中であるが経過良好である.
先天性完全房室プロック患者のペースメーカ植え込みの判定に際しては,His束心電図に加えて心室ペーシングによるoverdrive suppression testを試みるのが良い方法ではないかと考える.