1975 年 7 巻 1 号 p. 36-42
左房内が直接観察される機会のあった症例で,その際左房内血栓が確認されたものが9例あった.これらの症例で,あらかじめルーチン検査として記録されたUCGを遡って検討し,数十グラム以上の大血栓5例で,それに該当するエコーを認めた.発見される血栓の大きさの臨界値についてはなお今後の検討にまたねばならない.該当したエコーを見出し得なかった4例はいずれも左心耳内血栓の症例であった.したがって左房内血栓検出のためには,まず左心耳付近のUCG像を解明しておく必要があろう.
僧帽弁狭窄UCGでは硬化した後尖がしぽしぼ前尖の後方に太い線状エコーの層をなすのが見られる.このエコーは従来血栓エコーと混同されたと思われるが,互の性状,局在などに注目すれば,両者の鑑別は一般的には可能と思われる.その他,左房粘液腫,三心房心,健常左房後壁エコーなどと血栓エコーとの異同,およびそれらの鑑別についても論じた.