抄録
三心房症は比較的まれな疾患で,現在まで文献上200例以上の報告がある.われわれは36歳の女性で三心房症にASDを合併したLucas&Schmidtの分類IB1型を経験した.今まで報告された手術例82例を検討した結果,手術予後を左右しているものは,術前に正しい診断がなされていたかどうか,術後の呼吸管理の良否,肺血管の器質的変化の程度であるといえる.したがって直視下での手術そのものは容易であるので,診断技術の向上による早期手術と術後の呼吸管理が重要になってくる.
しかしながら,本症はしばしば術前診断が困難なことが多く,成人で本症にARDを合併した場合,特に難しい,われわれはASDの診断のもとに手術を行ない偶然に本症を発見,根治することができた. この経験からASD閉鎖前には必ず肺静脈還流口の確認と偏帽弁口の検索を行なうという基本的手技の重要性を再確認した.