心臓
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7 巻, 14 号
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  • 龍野 勝彦, 今野 草二
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1585-1596
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室中隔欠損(VSD)に伴う先天性パルサルパ洞動脈瘤といわゆるprolopsing AIの解剖学的な類似点と相異点について,おもに手術症例をもとに検討を行なった.室上稜下VSDではバルサルバ洞動脈瘤は1例のみでprolapsing AIとの関係について結論的なことは言えないが,どちらもVSDは室上稜下の左後方にあって,円錐部中隔のParietal band寄りの一部が欠如しているためにバルサルバ洞と大動脈弁の一部が右室側に露出していた.肺動脈弁下VSDに合併したパルサルバ洞動脈瘤ではprolapsing AIにくらべて右室円錐部筋の欠如部位がよりparietal band寄りにあって,バルサルバ洞の露出は大きく,VSDは小さく,大静脈弁のprdapseが起こりにくくなっている.prolapsing AIではこの欠如範囲がよりseptal band寄りにあるため,パルサルバ洞の露出は少なくなるが,大動脈弁はVSDを通って右室側へprolapseしやすい形をしている.
  • 飯沼 宏之, 加藤 和三
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1597-1605
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    期外収縮後収縮力増強(PEP)が早期収縮の活動電位変化で説明できるか否かを知るため,イヌ心室筋標本を用い,早期収縮の活動電位プラトー相の延長度(ΔPD)と代償性休止期後の収縮力増強度(ΔPT)の関係を検討した.〔K〕0=5.9mMでは試験刺激が早期であるほどΔPDは増し同時にΔPTも増大した.ΔPDとΔPTは直線関係にあり,ΔPDによってCa-influxが増し,それがPEPを招くとする説を支持した.
    しかし〔K〕0=1.2mMあるいはイソプロテレノール(IP)下では試験刺激の早期性を増してもΔPDの増大は軽度でかえって負になることも多かったにもかかわらずΔPTは存続し,ΔPDとΔPTの間に一定の関係はみられず,ΔPDが負の場合でもPEPが生じた.したがってPEPが早期収縮のプラトー延長によるCa-influxの増量によるとする説は完全でないと結論された.またIP下でpseudo-postextrasystolic depressionを認めた.
  • 藤井 諄一, 渡辺 〓, 加藤 和三
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1606-1617
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    UCG,超音波断層キモグラムにより心筋硬塞52例(うち急性例14例)狭心症発作時2例の左室収縮様式を正常例14例と対比検討した.
    心筋硬塞例では硬塞部に種々の程度のasynergyを,健常部に代償性運動増大を認め,それらの程度はPWE,SE,PWE-SE/EDD-ESDにより表された.これらの変化は急性期に著明で回復に伴い軽減する傾向があるが,一部には逆に増大する例もあった.
    硬塞部心筋では収縮期の厚さ増大が減少ないし消失し,壊死心筋の存在を示す所見と考えられた.狭心症発作時のエコーグラムに一過性の異常をみた2例を示した.収縮期の変化は軽度であったが,拡張期にも変化を生じ,後者は虚血による一過性の心筋stiffnessの増大や左心不全の存在を示唆すると思われた.
    UCG,超音波断層法は虚血部位の診断,asynergyの程度判定上有力な方法と結論されるが,左脚ブロック, 右心容量負荷例,原発性心筋疾患でもそれに似た動態異常をみることがあるため,その鑑別に留意することが必要である.
  • 後藤 一雄, 遠藤 真弘, 林 久恵, 今野 草二, 関口 守衛
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1619-1626
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和42年8月より48年8月までの過去6年間に,当教室のCCUが経験した心臓破裂は17例である.これは同期間中の心筋硬塞603例の2.7%にあたり,入院中死亡原因の10.1%にも達した.心臓破裂の透因として,広範囲な前壁硬塞であること.高齢者であること.硬塞後の血圧が120mmHg以上と比較的高値を持続している症例であることがあげられた.
    大伴の症例は,硬塞後10日以内に発生しており,その期間内は心臓破裂に対する迅速な外科的治療ができる体制を整えておく必要があった.臨床像として,心膜摩擦音が心臓破裂の前駆症状となることがあるので注意する必要があった.また,臨床症状が急変し,その時に特徴的な心電図所見がみられた場合は,緊急に補助循環を行ない,破裂部に対する外科的処置を行なうことにより,さらに救命しえる症例が増加すると思われた.
  • 田中 敏行, 関 顕, 藤井 潤
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1627-1633
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    亜硝酸アミル(AN)吸入の心電図に及ぼす影響をみるため,76症例に安静臥位で20秒間AN吸入負荷を行ない, 負荷前後の心電図変化と心拍数(HR), 血圧(BP), tension time index(TTI)の変化を対比した.
    HRは吸入開始30秒後から1分後まで増加し, BPは30秒後著明に降下するが,1分後には前値に復した. TTI は30秒後減少したが,1分後には前値に復するか, 軽度に増加した.
    心電図のRおよびSは吸入前後でほとんど変化せず, STも47例(62%)は不変であった. T波は吸入前V5誘導で陽性Tを有した31例中19例(61%)で減高し, -0.1mVまたはより深い陰性Tは41例中35例(85%)で, -0.5mVまたはより深い陰性Tは23例の全例で浅くなった.
    T波の変化は30秒後から1分後まで認められ,2分後には前値に復する傾向にあった. T波の変化とHRの変化とは時間的に同様の経過を辿ったが, 両者間で変化の大きさには相関は認められなかった. AN吸入後のT波の変化の機序につき, 反射性交感神経緊張が関与している可能性を考察した.
  • 鬼木 秀夫, 柊山 幸志郎, 隈本 健司, 尾前 照雄, 山本 良高, 田仲 謙次郎
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1634-1641
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    各種高血圧18例を対象にoxprenololとhydralazine 9例(1群),propranoloとhydralazine 9例(II群)の併用による治療を20日間行ない,その前後の血圧,心拍数,血漿レニン活性,腎機能,体重の変化と副作用を比較検討した.
    収縮期血圧,拡張期血圧は治療後I群でそれぞれ30±4, 17±2mmHg(平均±標準誤差),II群でそれぞれ18±4, 19±3減少しいずれも有意であった.心拍数には両群ともに有意の増減を認めなかった.安静時血漿レニン活性は治療後I群で+0.5±0.36ng/ml/hr,II群で-0.25±0.52,運動負荷後の値はI群で+0.69±0.62ng/ml/hr,II群で+0.26±0.36の変化を示したがいずれも統計的に有意ではなかった.II群でPSPが治療後有意に増加した以外両群においてクレアチニン・クリアランス,PSPに有意の変化はなく,体重も不変であった.認むべき副作用の発現もなく,名薬剤の1日平均使用量は比較的少量であり,高血圧の治療において,試みられるべき方法と考えられる.
  • 近藤 肇彦, 西島 早見, 森本 重利, 留守 健一, 幸地 佑
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1642-1648
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    部分的肺静脈還流異常(PVPVR)と心房中隔欠損症(ASD)とを合併した左型三心房症(CT)の治験例について報告するとともに,本症の診断や治療などについて考察を加えた.
    また血行動態的立場から本症の1分類法について検討を加え,本邦報告例を中心に若干の考察を加えた.
  • 河村 剛史, 田中 二仁, 松本 学, 平塚 博男, 伊野 照子
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1649-1659
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    三心房症は比較的まれな疾患で,現在まで文献上200例以上の報告がある.われわれは36歳の女性で三心房症にASDを合併したLucas&Schmidtの分類IB1型を経験した.今まで報告された手術例82例を検討した結果,手術予後を左右しているものは,術前に正しい診断がなされていたかどうか,術後の呼吸管理の良否,肺血管の器質的変化の程度であるといえる.したがって直視下での手術そのものは容易であるので,診断技術の向上による早期手術と術後の呼吸管理が重要になってくる.
    しかしながら,本症はしばしば術前診断が困難なことが多く,成人で本症にARDを合併した場合,特に難しい,われわれはASDの診断のもとに手術を行ない偶然に本症を発見,根治することができた. この経験からASD閉鎖前には必ず肺静脈還流口の確認と偏帽弁口の検索を行なうという基本的手技の重要性を再確認した.
  • 定方 正一, 渡辺 憙市, 三品 陸人, 堀内 藤吾, 石沢 栄次, 田中 茂穂, 佐藤 清春, 古賀 義久
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1661-1666
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    11歳の男子で,心室中隔欠損を伴った全肺静脈還流異常症の1期的根治手術に成功した.
    全肺静脈還流異常はDarling IA型で,左心房と肺静脈総室との間に径43mm大の吻合口を作成し,同時に28mmの心房中隔欠損と6mmの心室中隔欠損を直接縫合した.
    著者らが調べ得た範囲では文献上最初の手術成功例と考えられる.
  • 白 秀郷, 門間 和夫, 高尾 篤良
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1667-1671
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    三尖弁閉鎖症は多くの症例において左軸偏位,左室優位を呈することが知られている.右軸偏位あるいは正常軸を示す症例はまれにあるが,その場合,大血管転位を伴う肺血流量の増加したものに見られている.しかし,本症例では,肺血流量が滅少した三尖弁閉鎖症のIa型でありながら,スカラー心電図の前額面では右軸偏位(+120°),右前胸部誘導V1V2では比較的高いRを示し,ベクトル心電図で前額面の初期ベクトルは左上方に向き,-60°を呈し,QRSの最大ベクトルは+80°左下に向き,QRSループは時計方向に回転し,主にX軸の下方にあった、このような所見は従来肺血流量の増加した三尖弁閉鎖症にしかみられないものである.この現象の説明として,いわれる左脚後枝の伝導の何らかの障害あるいは異常と,ある程度発達した右室壁の存在の関与を考えた
  • 野元 域弘, 松崎 益徳, 池江 喜信, 三瀬 淳一, 田辺 満彦, 古谷 晴茂, 内野 文弥, 野瀬 善光
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1672-1676
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    特発性心筋症で突然死した2剖検例の臨床経過および剖検所見を報告する.組織学的には症例1は, fibrosis typeであり,病例2は, hypertrophy typeで異なっていたが,倒れて突然死する過程はきわめて類似していた.
    このことより,特発性心筋症における突然死の原因は,左室流出路狭窄のみでなく,予備能の低下した特発性心筋症では,軽度の心負荷で,左室のコンプライアンス低下,左室拡張弛期終圧上昇などの血行動態的変化が急激に起こり,心拍出を停止させるのではないかと推測した.一方,心室細動発作,洞停止などの不整脈の発生も,突然死に関与する可能性を示唆した.
  • 須磨 幸蔵, 辻 隆之, 三井 利夫, 藤森 義蔵, 三枝 正裕, 堀 原一, 浅野 献一, 戸川 達男, 内山 明彦
    1975 年 7 巻 14 号 p. 1678-1685
    発行日: 1975/12/31
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    現在57歳の女性で,昭和36年頃よりAdams-Stokes発作を呈し,昭和39年3月に自製の電池自蔵型ベースメーカの植え込みを行なった.その後電池消耗,感染により一時体外ペーシングを行なったが,昭和40年5月に独自に開発した直接誘導型ペースメーカ(電極はステンレス鋼有芯コイル状電極)の植え込みを行なった.以来ペースメーカの故障もなく10年以上無事故で経過し,元気に家庭生活を送っている.心臓カテーテル検査を昭和41年および昭和50年に行なったが,いずれの検査でも良好な心臓機能を示した.
    最近,リチウム電池,Ni-Cd電池,原子力電池による長寿命ペースメーカの開発が行なわれているが,寿命の点では誘導型ペースメーカはそれらを凌ぐものと考えられ,積極的な研究開発が望まれる.
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