1975 年 7 巻 9 号 p. 1063-1070
労作時の心悸亢進を主訴に来院した,32歳男性に,造影上,冠状動脈系のintactの左室瘤を認め,左室瘤切除術を行なった.術中の局所所見では,線維性で硬く,厚く触れ,心外膜との癒着もみられず,人工心肺下にても拡張期性陥没を認めず,通常の硬塞後心室瘤とは異なる所見を示した.
術後10日にして,心室瘤切除標本から心筋sarcoidosisの病理診断を得,predonisolone投与を開始したが,術後の低血圧が継続し.34日目に肺水腫にて死亡した.
心筋sarcoidosisによる心室瘤の報告は極めて少なく,著者らの調査では,現在までに本例を含めてわずかに5例で.手術例は3例,うち成功例は1例である.左室造影により,生前に心室瘤を確認し,心室瘤切除を行なった症例について,その臨床経過,手術ならびに剖検所見を報告する