1975 年 7 巻 9 号 p. 1071-1078
右肺静脈の一部または全部が下大静脈に異常還流し,加えて右肺の低形成と心の右方転位を伴ったものを1960年NeillはScimitar症候群と命名した.1912年にParkが第1例を報告して以来1974年までわれわれの調べ得た限りでは30例余の報告しかない.
最近われわれはScimtar症候群に加えて左心系の低形成,大動脈縮窄症,心房中隔欠損症,心室中隔欠損症動脈管開存症,下行大動脈より右肺への異常動脈注入,膜様横隔膜などの多彩な奇形を伴つた例に遭遇した.
患者は生後40日目に命の綱となつていた動脈管が閉鎖したため死亡したが,今までにこれほど多彩な合併奇形を持つたScimitar症候群は報告された事がないので若干の文献的考察を加えて報告する.