心臓
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ノート 人工弁置換術前後のGlucose-Insulin-Kalium(GIK)負荷に対する反応 特に水分,電解質変動の面から
坂下 勲安藤 武士松川 哲之助浅野 献一
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1975 年 7 巻 9 号 p. 1104-1110

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抄録

人工弁置換例7例,その対照として軽症な開心術症例5例について,術前日と術後3~4週目にGlucose-Insulin-Kalium(GIK)溶液を短時間に静注し,その溶液注入前後で心拍出量,動脈血ガス分析,血清電解質,尿量,尿中電解質を測定し,それらの値に認められる変動から,弁膜疾患患者が人工弁置換によって受けた影響を評価出来るか否かを検討した.心拍出量は注入前値に比べ人工弁置換群で術前1.2倍,術後1.7倍に,対照群ではそれぞれ1.7倍,1.3倍となった.
動脈ガス分析上,PaO2は人工弁置換群で術前,術後で有意に増加し,base excessは術前2.1±3.4mEq/Lから1.0±4.6mEq/L,術後では2.9±2.4mEq/Lから2.5±2.4mEq/Lと変化し,対照群のこれらの値の変化は著明でなかった.
血清電解質の変動は人工弁置換群で術前Clの増加とIPの減少,術後はKとClの増加,IPの減少が示された.対照群で術後IPにのみ減少が認められたに過ぎない.GIK点滴期間中の尿量のみが対照群の術前,術後期間で有意の差が得られたに過ぎなかった.尿中電解質排泄は人工弁置換群で術後K,Clで増加した.
以上対照群の病態がより好ましい状態としてGIK負荷に対する反応を考察すると,人工弁置換後3ないし4週間の時点では水分,電解質を調整する機能はまだ充分に回復していないと推測された.

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