抄録
心不全に対する血管拡張療法の臨床的評価を目的として肺動脈拡張期圧(PADP)14mmHg以上の心不全患者11例にisosorbidediritrate(ISD)5mg,nitroglycerin(TNG)0.3mgを舌下に投与し血行力学的効果を検討した.ISDでは投与後15分で最大効果に達しPADPは2e7%低下(20.4→150mmHg,P<0.05),平均血圧は130%低下(92→80mmHg,P<0.05)を示し,3時間まで血行力学的効果の持続傾向を認めた.TNGはISDと同様の作用を示したが持続は短く60分でほぼ効果が消失した.心係数はISD投与後,PADP20mmHg以上の重症心不全では不変(2.13→2.12L/min/M2)であったが,PADP20mmHg未満の軽症心不全では軽度減少(245→213L/min/M2)を示し,左室機能曲線は重症心不全で水平に左方に,軽症心不全で軽度左下方に推移した.以上より,ISDは重症心不全に対し心機能を低下させる事なく肺動脈拡張期圧を低下させる作用を示し,肺静脈うっ血の軽減に役立つと考えられ,また持続が長く経口投与が可能な事より心不全に対する長期間の血管拡張療法に適する.