心臓
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臨床 Flavin adenine dinucleotide(FAD)の静脈内投与によりもたらされる胸内苦悶の出現機序について
岸田 正昭中真 砂士
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1976 年 8 巻 14 号 p. 1433-1440

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抄録
FADを静脈内に投与すると,副作用として一過性に胸内苦悶が出現することは,すに臨床的に知られている.しかしその出現機序は不明であった.われわれは,これを明らかにするための臨床実験を行った.すなわちのべ17例の健常男性に対してFAD10~30mgを投与したところ,6例に胸内苦悶が出現した.この6例では,FAD投与後一過性に心拍出量の低下が認められた.一方胸内苦悶の出現しなかった11例では,心拍出量の低下は1例にも認められなかった.この結果から胸内苦悶の出現には,FADの心筋収縮力の減弱作用の結果もたらされる心拍出量の低下が関与していることが推察された.
又FADの静脈内投与により一過性ではあるが完全房室ブロックなどの重篤な不整脈が出現し得ること,さらにはFADの薬理学的作用として報告されているもののうち心拍数減少作用および血圧降下作用は麻酔の有無によってその成績が異なる事を指摘し,考察を行った.
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