抄録
症例は16歳女性で左房拡張と更に限局性の著明な心房壁瘤(動脈瘤)を形成し,同時に僧帽弁閉鎖不全症(MI)を伴っており,その手術所見より先天性と考えられた極めて稀な1例である.リウマチ熱の既往は無く,昭和48年ウッ血性心不全として加療を受け,精査を勧められた.心尖部全収縮期雑音(4/6)や色素稀釈曲線からMIが考えられた.胸部レ線上では左第2弓が著明に膨隆しており,その異常陰影は心血管造影によって左房瘤である事が確認され,同時にMIも証明された.このような症例では不整脈や血栓等の合併症により突然死を来たす事から,外科的治療が勧められている.従って心房瘤縫縮と共に人工弁置換が行なわれた.その手術所見からは後乳頭筋の短縮によるMIがあり,同時に肺静脈の異常開口を伴った限局性の心房壁瘤を認める等,先天性を思わせるものであった.