植物環境工学
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論文
黄色LED光源を用いた物理的害虫防除装置の試作
-ヤガ類の行動観察結果-
平間 淳司関 憲一細谷 直輝松井 良雄
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2007 年 19 巻 1 号 p. 34-40

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抄録

本研究では,近年,特に農作物に被害を多くもたらす難防除害虫種(ハスモンヨトウやオオタバコガなどのヤガ類)に対して,化学農薬に替わる物理的な害虫防除に関して,超高輝度型黄色LEDの諸特性を積極的に利用した物理的な新しいタイプの害虫防除装置の開発を目指している.本研究のアプローチは,まず,対象害虫に対する各種光刺激に対するERG信号の波長依存特性および自発性ゆらぎのパワースペクトル計測を行った.次に,ERG信号の光応答特性を踏まえたLED光源パネルを試作して,圃場にてキャベツ栽培現場で加害調査実験を試みることで,光源パネルの有効性の検討をした.その結果,以下の結論を得た.
(1) オオタバコガとハスモンヨトウのERG信号のVppは,450 [nm]~600 [nm]の波長波長域で大きな反応を示し,感度の高い光の受容体が存在した.ただし,オオタバコガは光の放射束密度の増大に伴い,光の受容体の選択性が弱まる傾向を示した.
(2) 周期的な光刺激を与えた場合であっても,ヤガ類のERG信号には,自発性のゆらぎが観測された.そのゆらぎのパワースペクトルの傾斜特性は,1/f ~1/f2を示した.
(3) 上記(1)(2)のERG信号の光刺激応答特性を踏まえ,黄色LED光源パネルを試作し,物理的な防除装置を開発した.圃場にて光源パネルを用いキャベツの露地栽培現場にて,加害調査を実施してその有効性を調査した.その結果,無点灯区と点灯区との比較では,点灯区の方が1/7から1/8の被害が低減することがわかった.また,点灯区であるパルス光とゆらぎ光とを比較すると,両者には差がないことがわかった.この原因として,点滅光の周波数設定値が不適切であったとも考えられた.しかしながら,消費電力の観点からは,連続光に比べ点滅光の方が約1/2であり,点滅光が期待できることがわかった.
今後は更に反復実験をすることで,黄色LED光源パネルが十分な物理的な害虫防除装置としての有効性を検証する予定である.

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© 2007 日本生物環境工学会
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