【目的】
近年,脳梗塞再発予防等に使用される低用量アスピリンとプロトンポンプ阻害剤 (PPI) の併用症例が増加し,その副作用として小腸傷害を生じることが報告されている.そこで,NSAIDによる小腸傷害を軽減することが実験的に知られているBifidobacterium bifidum G9-1 (G9-1) が本小腸傷害に対しても効果を示すかを明らかにするため,PPI及びアスピリン誘発性小腸傷害モデルマウスを作製し検討した.
【方法】
C57BL/6J雄性マウスに高果糖食を9週間摂食させるとともに,オメプラゾール20 mg / kgを腹腔内投与した.アスピリン200 mg / kgの経口投与3時間後に解剖し,腸管透過性,空腸の傷害レベル・細菌叢及び遺伝子発現量を評価した.
【結果】
PPI及びアスピリン併用投与群では,腸管透過性の亢進や病理スコアの増加並びに,空腸内におけるAkkermansia属の占有率増加が認められた.一方,アスピリン投与1週間前よりG9-1を経口投与した群ではいずれの変化も認められず,また空腸において粘膜ムチン層に関連するMUC2やTFF3の発現亢進が認められた.さらに,A. muciniphilaを腸管に定着させたノトバイオートマウスで亢進した腸管透過性がG9-1投与群で抑制された.
【結論】
PPI及びアスピリンの併用投与により生じる小腸傷害に対し,G9-1は有意な抑制効果を示した.そのメカニズムとして,ムチン分解菌Akkermansia属細菌の抑制並びにムチン層維持増強の関与が考えられる.