【背景】 NLRP3 inflammasomeはNLRP3およびpro-Caspase-1、ASCから構成され、cleaved Caspase-1を介してpro-IL-1β・IL-18を活性型であるmature IL-1β・IL-18に変換することで炎症を惹起する。5-FUは炎症性サイトカイン上昇を伴う小腸粘膜傷害を惹起することが知られているが、NLRP3 inflammasomeの5-FU起因性小腸粘膜傷害における役割は現在明らかではない。
【目的】 5-FU起因性小腸粘膜傷害におけるNLRP3 inflammasomeの役割を明らかにする。
【方法】 小腸粘膜傷害は雄性Wild Type(WT)、Caspase-1-/-、NLRP3-/-マウスに5-FUを腹腔内投与(500mg/kg)することによって惹起した。同WTモデルマウスにrecombinant IL-1βまたはIL-18(0.1μgまたは1μg/kg/日)を腹腔内投与した。抗IL-1β中和抗体(100μg/匹/日)を投与した。Caspase-1阻害薬(Ac-YVAD-CMK; 1mgまたは10mg/kg/日)を投与した。マウス各群の体重変化・下痢の程度や、小腸組織の組織学的検討、炎症及びNLRP3 inflammasome関連分子の発現解析を行った。
【結果】 組織学的検討では、5-FU投与後3日目を最大として絨毛高が低下し、強い炎症性変化を認めた。それはKCとTNF-αのmRNA発現量の増加を伴った。5-FU投与後3日目に、mature-IL-1β、cleaved Caspase-1、並びにNLRP3の蛋白質発現量の増加を認めた。しかし、5-FU投与後3日目にmature IL-18の増加は認めなかった。Recombinant IL-1β投与群で小腸粘膜傷害は増悪したが、中和抗体投与群では粘膜傷害は改善した。一方、recombinant IL-18投与群では粘膜傷害の程度に有意な変化は無かった。Ac-YVAD-cmk投与群、Caspase-1-/-とNLRP3-/-マウス群では小腸粘膜傷害は軽減した。5-FU投与はmature IL-1βとNLRP3 inflammasome関連分子の発現を増加させ、小腸粘膜傷害を惹起した。そして、IL-1βの投与は小腸粘膜傷害を増悪させ、IL-1β、Caspase-1、並びNLRP3の阻害は小腸粘膜傷害を抑制した。
【結語】 5-FU起因性小腸粘膜傷害はNLRP3 inflammasomeによるIL-1βの活性化により誘導されることが明らかになった。