2023 年 64 巻 2 号 p. 94-99
保存料として使用されている安息香酸(BA)は天然にも存在するため,行政検体の保存料検査において,添加されたものとの判別が必要になる.一方で,近年,多様な果実類およびその加工品が出回っており,それらに含有される天然のBAのデータが不足している.そこで,天然由来のBA含有量を把握するため,これまでに報告事例のないものも含め,検出事例の多い果実加工品とその原料にあたる生鮮果実100試料について,水蒸気蒸留法(蒸留法)および透析法による調査を行った.蒸留法では2.2~1,950 μg/g,透析法では,2.1~1,380 μg/gのBAを検出した.透析法と蒸留法の測定値を比較したところ,多くの試料で蒸留法の測定値の方が高かった.本調査結果は,保存料検査において,BA添加の有無を判別するための参考データとして行政上活用されることが期待できる.