食品衛生学雑誌
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過酸化水素の殺菌機構について
川崎 近太郎永納 秀男飯尾 利弘近藤 雅臣
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1970 年 11 巻 3 号 p. 155-160

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抄録

過酸化水素の細菌菌体内酵素におよぼす影響を大腸菌および腸炎ビブリオを用いて検討した. 過酸化水素処理菌体の各種酵素活性は低下し, とくにAldolaseおよびAconitate hydrataseの活性が強く阻害されていた. その活性阻害度は殺菌効果と同様に過酸化水素濃度のみでなく菌体量にも関連することが明らかとなった.
これらの結果から, 過酸化水素は菌体内の特定酵素を阻害するのでなく, 酵素系全般に影響を与えることが明らかとなった.
また, 無細胞抽出液および粗酵素を過酸化水素処理した際, 抽出菌の種類には関係なく酵素タンパク量に対する過酸化水素量の比に比例して, 酵素阻害がおこることが観察された.
過酸化水素の芽胞菌体におよぼす影響を枯草菌芽胞を用いて検討した. 枯草菌芽胞は, 400mg H2O2/mg SporeNで80°, 30分の加熱処理で完全に死滅し, その際, 多量のDPAを菌体外に流出した. また, 過酸化水素処理をすると芽胞殼成分中にシステイン酸が検出され, その内層成分に質的, かつ量的に大きな変化が認められた.

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