ブドウ球菌による集団発生例75例およびわれわれが直接関係した29例について種々検討し, 併せて当研究室に送付されたブ菌食中毒由来株のファージ型別による成績および代表的な2例と某給食従事者のブ菌の保菌状態を調査してつぎのような結果を得た.
1) 昭和36年に全国に発生したブ菌による事例のうち約半数が集団例で, その原因食はそれぞれ摂食場所, 調理場所に特色があり, 一般的に菓子類, おにぎり類, 折詰弁当等で, その汚染源はいずれもそれを調理した者等が病原性ブ菌の保菌者であり, それから移行増殖したものである.
2) 調製から摂食までの時間と食中毒発生の関係は4時間以内に摂食したものからは中毒発生がなく, その大部分は10時間以上のものからである.
3) ファージにより汚染源の追求等が効果的に行なわれ, その真原因の検索に威力が発揮されているが, その原因菌の決定にはやはり, 疫学的調査等の結果との総合的な判断によるべきである.
4) 衛生設備の優秀な給食場の従業員でも病原性ブ菌の保菌者は約30%以上も存在し, なかには相当長期にわたり排菌し常に食中毒発生の危険性があり, これに対する対策が確立されるべきである.