小児耳鼻咽喉科
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原著
小児上気道感染症患児の鼻咽腔から検出された肺炎球菌の薬剤感受性の変化
宇野 芳史
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2009 年 30 巻 3 号 p. 232-247

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抄録

  2003年から2007年に当院を受診した小児上気道感染症患児の鼻咽腔から検出された Streptococcus pneumoniae 5720株を対象に薬剤感受性および耐性率について検討を行った。S. pneumoniae の penicillin G に対する薬剤感受性の変化は,いずれの年度も 2 峰性のピークを示していた。耐性率では PSSP, PISP, PRSP 毎の割合で検討してみると,2006年を境に,特に PRSP の割合の減少,PSSP の割合の増加が顕著であった。PRSP と PISP を合わせた耐性化率は,2003年には90%を越えていたものが,2007年には75%を切るところまで低下していた。pbp 遺伝子の変異について検討を行うと,いずれの年度においても,pbp1a, 2b, 2x の 3 遺伝子とも変異している株(gPRSP)の割合が最も多く,約60%の割合で認められた。しかし,年度を追うごとにその割合は減少しており,2003年では70%近く認められていたものが,2007年では60%を切るところまで減少していた。3 遺伝子とも変異している株に引き続き,pbp2x, pbp1a+2x, pbp2b+2x が変異している株が各々約10%前後認められた。また,2003年には pbp 遺伝子の変異を来していない株(gPSSP)はほとんど認められなかったが,2007年にはその割合は10%近くまで増加していた。Erythromycin に対する感受性の変化は,いずれの年度も 2 峰性のピークを示していた。

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© 2009 日本小児耳鼻咽喉科学会
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