2010 年 31 巻 1 号 p. 19-23
sialolipoma は,2001 年に Nagao らが,唾液腺良性脂肪腫の新しいカテゴリーとして提案した病理組織学診断による疾患である。境界明瞭な被膜を有し,分化の良い成熟脂肪細胞とほぼ正常な腺組織から構成される腫瘍と定義される。その組成は90%以上が脂肪成分であるが,lipoma とは異なり必ず腺組織が存在することがその特徴である。われわれが渉猟し得た限りでは,耳下腺原発 sialolipoma は全13例で,うち小児は 3 例の報告を認めるのみであった。また,小児例は全て先天性と考えられた。今回われわれは耳下腺原発先天性 sialolipoma の 1 例を経験した。症例は 1 歳 6 カ月の女児で,出生時より増大する右耳下部の無痛性腫瘤を認めた。診断には MRI が有用であり,顔面神経を温存した腫瘍全摘出術を施行し,再発なく経過良好である。術後は予後良好であるため,小児例でも腫瘤増大前に手術摘出すべきと考えられた。