小児耳鼻咽喉科
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原著
診断が遅れた先天性難聴の一症例
樋口 仁美中川 尚志
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2010 年 31 巻 3 号 p. 312-317

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抄録

  三歳児聴覚検診や新生児聴覚スクリーニングの普及で,難聴の早期診断やその後の療育体制の地域差がクローズアップされている。今回,診断が遅れた先天性難聴の一例を経験した。症例は12歳女児で,主訴は難聴であった。幼少時より両親が難聴に気付き,近医受診するも経過観察となっていた。小学校卒業前に難聴が原因で学業に支障がきているのではと指摘され,精査目的に当科受診となった。構音に若干の歪みを認め,先天性難聴が疑われた。しかし,言語面,学習面での大きな遅れは認めてなかった。地方都市の中心部より離れた地域に住んでいるので,各学年が少人数の一クラスしかなく,両親から学校への要望で教師も学習の進度を気に掛けていたためと推測した。また友人がほぼ同じという環境で,対人のトラブルもなく過ごすことができたものと考えられる。今後,進学や就労時に難聴によって生じる問題への対応などが必要になってくると思われる。

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© 2010 日本小児耳鼻咽喉科学会
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