抄録
真珠腫が消失,縮小した 2 症例を報告する。症例 1 は鼓膜より白色の腫瘤を透見した。CT 画像にて円形の軟部組織陰影を認め,先天性真珠腫が疑われた。10ヵ月後 CT 画像上軟部組織陰影が増大した為,試験的鼓室開放術を行った。粘稠な滲出液が多量に吸引され,明らかな真珠腫塊や debris などは認められなかった。症例 2 は 1 歳時に鼓膜換気チューブを留置している。7 ヵ月後チューブの上方に白色の腫瘤を透見した。CT 画像上チューブに接した円形の軟部組織陰影を認め,後天性の真珠腫が疑われた。その後画像検査を定期的に行い,2010年 1 月現在軟部組織陰影は縮小している。先天性真珠腫の中に自然消失する症例が報告され,消失する要因としては炎症またはアポトーシスが働くとことによると推察されている。画像上真珠腫が鼓室内に限局している,耳小骨と接していない,耳小骨の破壊がない,合併症がない症例であれば経過観察するのも 1 つの選択肢と考える。